シニア犬に多く見られる「夜鳴き」や「徘徊」は、飼い主にとって大きな悩みのひとつです。眠れない夜が続くと飼い主も疲れ果て、犬との生活に負担を感じてしまうことも少なくありません。しかし、叱って解決するものではなく、原因を理解して工夫することで改善できるケースが多くあります。本記事では、夜鳴きや徘徊の背景にある理由を解説し、やさしく改善するための具体的な方法をご紹介します。
なぜ夜鳴きや徘徊が起こるのか
夜鳴きや徘徊は単なる「わがまま」ではなく、シニア犬にとってSOSのサインです。もっとも多い原因は認知症による昼夜逆転や不安です。暖かい昼間によく寝てしまい、夜に目が覚めて落ち着かなくなることで鳴き声や歩き回りをしてしまいます。
また、視力や聴力の低下といった感覚器の衰えも影響します。暗闇で周囲がよく見えず、不安から鳴いてしまうことがあるのです。さらに、体調不良や排泄の不快感が隠れている場合もあります。お腹の痛みやトイレの失敗が原因で落ち着きを失うことも珍しくありません。
まずは「なぜ起きているのか」を正しく見極めることが改善の第一歩です。
夜鳴き・徘徊に対してやってしまいがちなNG対応
夜鳴きや徘徊に悩まされると、つい感情的になって叱ってしまったり冷たい対応をしてしまうこともあるかもしれません。しかし、特に以下の対応は逆効果になるため避けましょう。
まず「大声で叱る」こと。犬は何が悪いのか理解できず、不安が増幅します。次に「完全に無視する」こと。状況によっては放置がかえって孤独感を強め、行動がエスカレートすることもあります。また、徘徊中に「無理に動きを止める」と、怪我や強いストレスにつながります。
そして最も危険なのが「仕方ない」と放置してしまうことです。症状が進行し、生活の質が大きく低下してしまいます。対応の基本は「叱らず、そばでやさしく声をかける」。これが安心感を与える第一歩です。
シニア犬の夜鳴きをやさしく改善する工夫
夜鳴きを抑えるには、生活環境と寝る前の準備がポイントです。
まず、寝る前に軽い散歩やマッサージを行い、心身を落ち着けるのがおすすめです。適度な運動で疲労感を与えることで、深い眠りにつきやすくなります。次に寝床の環境を見直しましょう。室温が快適か、暗すぎて不安を感じていないかを確認し、必要に応じて常夜灯をつけると安心感が増します。
また、アロマやリラックス音楽を取り入れるのも効果的です。ラベンダーの香りや穏やかな音楽は、犬の心を落ち着かせるサポートになります。さらに、飼い主の匂いがついた布やお気に入りのぬいぐるみを寝床に置くと、安心して眠れる環境が整います。
アロマオイルにはマジョラムやティーツリー、柑橘系など犬に使えない精油もあります。調べてから安全に使うようにしましょう。
夜食やトイレを寝る前に済ませておくことも大切です。空腹や排泄の不安が夜鳴きの引き金になっている場合があるため、これを解消するだけで改善することもあります。
老犬の徘徊をやさしく改善する工夫
徘徊は完全に止める必要はなく、「安全に見守る」ことが基本です。
まずは部屋を安全に整えましょう。障害物を取り除き、滑り止めマットを敷くことで転倒や怪我のリスクを減らせます。徘徊の範囲をサークルや柵で限定するのも有効です。犬が自由に動けるスペースを確保しつつ、家具にぶつかって怪我をするのを防げます。
日中の活動量を増やすことも重要です。軽い運動や遊びでエネルギーを発散させておくと、夜の徘徊が減少する傾向があります。また、夜間に暗闇が不安を招くことがあるため、豆電球や足元灯を設置して夜に適した明るさに調整するのもおすすめです。
徘徊は犬にとって「脳が混乱しているサイン」ですが、飼い主の対応次第で安心できる時間に変えることができます。無理に止めるのではなく「安全にさせてあげる」視点を持つことが大切です。
シニア犬の問題行動は食事とサプリでサポートもできる
脳の健康を維持するための栄養サポートも欠かせません。オメガ3脂肪酸（DHA・EPA）は神経細胞を守り、記憶力や学習能力の維持に役立ちます。また、かぼちゃやブルーベリーなどに含まれる抗酸化成分は酸化ストレスから脳を守ります。
さらに、MCTオイルをはじめとする中鎖脂肪酸は、ブドウ糖の代わりに脳のエネルギー源として働き、夜間の不安軽減に役立つこともあります。市販されている脳サポート系サプリには、アスタキサンチンやホスファチジルセリンなどの成分が含まれるものもあり、認知機能の低下を緩やかにする効果が期待されます。
ただし、サプリや特定の食材は体質や持病によって合わないこともあるため、導入する際は必ず獣医師に相談しましょう。
獣医師に相談すべきサイン
夜鳴きや徘徊が続く場合、単なる老化現象ではなく病気が隠れている可能性もあります。特に次のようなサインが見られるときは、早めに受診が必要です。
- 夜鳴きや徘徊が急に悪化した
- 昼間も落ち着きがなく、生活に大きな支障をきたしている
- 食欲低下や急な体重減少を伴う
これらは認知症以外に、痛みや内臓疾患、ホルモン異常が関係している場合もあります。適切な診断を受けることで、薬や生活改善など効果的な対策がとれることがあります。「ただの老化」と思い込まず、獣医師に相談することが愛犬と飼い主双方の安心につながります。
【シニア犬の介護は長期戦】飼い主さんの心を守る工夫
夜鳴きや徘徊のケアは長期戦になることが多く、飼い主自身の心身の負担も無視できません。まずは飼い主が休める環境を整えることが大切です。耳栓やホワイトノイズを使い、少しでも眠れる工夫をしましょう。
また、一人で抱え込まず、家族で介護を分担することも重要です。可能であればペットシッターや一時預かりサービスを利用し、休息を確保するのも方法の一つです。「完璧に対応しよう」と気負う必要はありません。
シニア犬の介護はマラソンのようなものです。無理なく続けられる方法を選ぶことが、長期的に愛犬を支えるための秘訣です。飼い主の心が安定してこそ、犬も安心できるのです。
まとめ
夜鳴きや徘徊は「困った行動」ではなく、シニア犬からの大切なSOSのサインです。叱るのではなく、やさしく原因に寄り添い、生活環境や食事、サプリを工夫することで改善できるケースが多くあります。さらに、獣医師との連携によって適切なサポートを受けることも重要です。飼い主と犬の双方が安心して暮らせるように、できることから少しずつ取り入れていきましょう。
