愛犬が年を重ねるにつれ、「最近あまりご飯を食べなくなった」「食べる量が減ってきた」と感じる飼い主さんは多いのではないでしょうか。シニア犬になると、体の機能や感覚に変化が現れ、若い頃と同じように食事を楽しめなくなることがあります。
ですが、放っておくと体力や免疫力の低下にもつながってしまいます。本記事では、シニア犬がご飯を食べない原因と、実践しやすい工夫や対策法をご紹介します。
シニア犬になると全体的に食欲が落ち気味
犬も人間と同様に、年齢を重ねると感覚や体の機能に変化が現れます。特に以下のような理由から、食欲が落ちてしまうことが多いです。
まず、嗅覚や味覚の衰えによって、食事の香りを感じにくくなります。今まで好物だったフードにも興味を示さなくなるのは、このためです。また、歯や歯茎のトラブル(歯周病や歯のぐらつき)によって、噛むこと自体がつらくなることもあります。
さらに、肝臓や腎臓などの内臓機能の低下により、消化や吸収に負担がかかりやすくなり、「食べると気持ち悪くなる」「お腹を壊す」といった経験が食欲低下に拍車をかけることも。加えて、運動量が減って代謝が落ちるため、自然とお腹が空きにくくなるという側面もあります。
【対策ワンポイント】
まずは一度、動物病院で健康チェックを受けましょう。病気や痛みが原因で食欲がないケースもあります。
食欲がないときに安全ラインのチェックポイント
シニア犬の「食べない」は、必ずしもすぐに深刻な状態とは限りません。まずは次のような点を観察してみましょう。
- 元気や水分摂取量に変化はあるか?
食べない一方で水はしっかり飲んでいて、元気に動いているなら急を要することではないかもしれません。 - 便や尿に異常はないか?
下痢や便秘、尿の色や量の変化が見られる場合は、体内のトラブルが疑われます。 - 一日まるごと何も食べない日が続くか?
1日程度の絶食は様子見でも大丈夫ですが、2日以上続く場合は受診が必要です。 - ごはんだけを食べない場合
おやつや人間の食べ物には反応する場合、フードに飽きている可能性もあります。わがままと決めつけず、嗜好の変化にも目を向けてみましょう。
愛犬が食べない時にできる簡単な工夫
では、実際にシニア犬がご飯を食べないとき、どんな工夫ができるのでしょうか?飼い主さんが今日から実践できるアイデアをご紹介します。
トッピングで香りをプラス
香りが強く、犬が好む素材をトッピングすると食欲を刺激できます。例えば、蒸したささみ、かつお節、犬用のスープなどが効果的です。ただし、塩分や添加物がないものを選びましょう。
ドライフードをふやかして柔らかく
硬いフードはシニア犬には食べづらいことも。ぬるま湯でふやかすことで食感がやさしくなり、香りも引き立ちます。
温めて匂いを立たせる
冷たいままのご飯は香りが立ちにくいため、電子レンジで10秒ほど温めてあげると食欲をそそりやすくなります。
フードの形状やサイズを見直す
粒が大きすぎたり硬すぎたりすると、うまく噛めずに食べるのをやめてしまうことがあります。シニア用の小粒・柔らかめのフードに変えるのもおすすめです。
食事時間を決めて「ダラダラ食べ」を防ぐ
一日中いつでも食べられる状態だと、かえって食欲が落ちることも。朝夕の決まった時間に出し、30分ほどで下げるルールを設けましょう。
手から直接あげる
信頼する飼い主から直接与えられると、安心して食べてくれる犬も多いです。「一口でも食べてくれたらOK」くらいの気持ちで、焦らず接しましょう。
おやつは食べるのにご飯を食べないときは?
「ご飯は食べないのに、おやつは喜んで食べる」というシニア犬の行動には、いくつかの理由が考えられます。
まず、ご飯よりもおやつの方が香りや味が強いため、嗜好性が高く感じられることが一因です。また、「おやつ=ご褒美」として覚えているため、感情的な反応で食べたがることもあります。
このような場合は、ご飯の魅力を高める工夫がポイントになります。フードを温めて香りを立たせたり、ささみやスープなどでトッピングをして「おやつのような楽しさ」を加えることで、食欲が戻る可能性があります。
また、「おやつでお腹が満たされている」こともあるため、おやつの量やタイミングを見直すのも大切です。
食欲がない老犬に向いている食事まとめポイント
食欲不振の犬には、以下のような特徴を持つ食事がおすすめです。
- 柔らかくて香りが強い:ウェットフードやスープタイプの総合栄養食
- 温めると香りが立つ:レンジで10秒ほど温めて提供
- 消化が良い素材:白米、ササミ、かぼちゃなど(※手作り食は栄養バランスに注意)
- 栄養密度が高い:少量でもカロリー・栄養が摂れる高栄養タイプのシニア用フード
また、フードに“飽き”が来ている場合は、味や食感の違うフードに切り替えることで改善されることもあります。あくまで「食べることがつらくない」「楽しい」状態をつくることが大切です。
シニア犬の体重減少リスクに注意
シニア犬の食欲不振が続くと、徐々に体重が落ちてきます。特に脂肪だけでなく筋肉も減ってしまうと、運動能力や免疫力の低下につながり、寝たきりや病気のリスクが高まることがあります。
体重減少は見た目では気づきにくい場合もありますが、抱き上げたときに「軽くなった」と感じたり、背骨や腰骨がゴツゴツと目立ってきたら要注意。体重が減っていく=体が必要な栄養を確保できていないサインです。
また、筋肉量が減ることで体温維持が難しくなり、寒さに弱くなる傾向もあります。特に冬場は震えや体調不良を招きやすくなるため、早めの対策が必要です。
食事を少しずつでも摂取できるように、フードの見直しやトッピング、ウェットフードへの切り替えなどを実践し、体重維持を目標にしたケアを心がけましょう。
シニア犬の食欲増進におすすめの方法
日常の中でできる食欲アップの工夫も、積極的に取り入れてみましょう。下に兄弟わんちゃんの食欲が落ち気味なときにも役立つ方法です。
手作り食やウェットフードの活用
香りや食感に変化が出るため、嗜好性が高まります。ただし、栄養バランスには注意が必要なので、総合栄養食タイプを選ぶか獣医師に相談しましょう。
食前の軽い散歩
運動により代謝が上がり、自然とお腹が空きやすくなります。特に朝の散歩後は食事に切り替えやすいタイミングです。
サプリメントや犬用漢方
市販されているサプリや漢方には、胃腸を整える作用のあるものも。ただし使用前には必ず獣医師の確認を。
静かな食事空間をつくる
テレビの音や人の出入りが激しい環境だと、犬も落ち着いて食べられません。食事中は静かな空間を心がけましょう。
楽しい雰囲気づくり
食事中にたくさん褒めたり、「おいしいね」と声かけすることで、犬もポジティブな気持ちになります。雰囲気作りも大切です。
食欲不振による体重減少のリスク
シニア犬の食欲不振が続くと、体重が徐々に減っていきます。これは単に「痩せただけ」では済まず、筋肉量や免疫力の低下、体温調整の困難などさまざまな健康リスクを招きます。
特に筋力の低下は、転倒や寝たきりのリスクを高め、介護が必要になる原因にもなりかねません。また、必要な栄養素が摂取できない状態が続くと、貧血や内臓機能の悪化にもつながります。
早期の対処がカギ
愛犬の背骨や肋骨が目立ってきた、抱っこしたときに「軽くなった」と感じた場合は、既に体重が落ちているサインかもしれません。食欲不振が2〜3日以上続く場合は、自己判断せず獣医師に相談しましょう。
シニア犬が急に食べなくなったら、栄養ニーズの変化を疑おう
年齢とともに、犬の必要とする栄養バランスは変わっていきます。特にシニア期には、以下のような変化が起きます。
これまでのフードが年齢に合っていない可能性もあるため、「急に食べなくなった」=フードの見直しタイミングと捉えるとよいでしょう。
シニア犬専用のフードはこれらのポイントを押さえて作られていることが多いため、まずは切り替えを検討するのも一つの方法です。
どうしても食べないときは
いくら工夫をしても2日以上何も食べない状態が続く場合は、必ず動物病院を受診してください。栄養失調や脱水症状のリスクが高まります。
最終手段としてシリンジ(注射器)で流動食を与える方法もありますが、誤嚥の危険性もあるため自己判断は禁物です。強制給餌にはリスクがあるため、獣医師の指示のもとで行う必要があります。
よくあるQ&A
Q. シニア犬が好む食べやすいフード形状は?
→ 一般的には「小粒」「柔らかめ」「香りが強い」フードが好まれます。年齢に合ったシニア用フードを選ぶと良いでしょう。
Q. トッピングを続けるのはよくない?
→ トッピングばかりに頼ると栄養が偏る可能性があります。ただし、栄養バランスを崩さない範囲で使う分には効果的です。素材に変化をつけるのもポイント。
Q. 高タンパク低脂肪のフードが理想?
→ 筋肉の維持には高タンパクが重要ですが、腎臓病など持病がある場合は注意が必要です。獣医師と相談しながら選びましょう。
まとめ
シニア犬が食事を拒むようになるのは、加齢による自然な変化のひとつです。しかし、放っておくと健康に大きな影響を及ぼします。まずは原因を見極め、体調・フード・食事環境などを見直してみましょう。
愛犬のペースに合わせた優しい対応と早めの工夫で、シニア期も楽しく安心できる食生活を送ることができます。